筑波大日本史対策


 筑波大学は2次試験で日本史を実施する。人文・文化学群は社会科目が必須で、地歴・公民の中から1科目選択、総合学域群、社会・国際学群の国際総合学類は地歴・公民・数学の中から1科目選択、社会・国際学群の社会学類は国語・数学・地歴の中から1科目選択、人間学群は国語・数学・地歴・公民・理科から1科目選択である。

 筑波大学は学群によって、2次試験の比率が異なる。地歴・公民が必須の人文・文化学群は共通テストと2次の比率が1:2で、2次試験における英・国・社の比率は1:1:1のため、社会(日本史・世界史・地理・倫理から1科目選択)の対策が軽視できない。

 筑波大日本史は全て論述問題、大問4題で第1問が原始・古代、第2問が中世、第3問が近世、第4問が近現代である字数は400字と指定がある。4問のうち、3問は指定語句を4つ使用した論述問題、残りの1問は史料を出題し、史料に基づき、400字論述をさせる問題となっている。時間数は120分、単純計算で1問あたり、30分となる。

 筑波大日本史は1年あたりの総字数が1600字で、論述問題を出題する国公立大学の入試問題の中でも最大字数である。また、出題される論述問題の難易度は高く、時間をかけて取り組む必要性がある。難易度が高いうえ、1年分を対策するのにかなり時間がかかるため、通史学習と並行して、早い段階から論述対策を意識したい。参照する教材としては、教科書は山川『詳説日本史』もしくは実教『日本史B』、参考書としては塚原哲也『日本史実力強化書』(駿台文庫)を使用すればよいでしょう。旧センター試験レベルの用語については知識として蓄えておきたいので、鈴木和裕『時代と流れで覚える!日本史B用語』(文英堂)を使いたい。

 筑波大は推移・変化型、多面型の2パターンが中心となる。前者は時期で場合分けしつつ、時期ごとの共通点と違いを意識したい。後者は政治・経済・文化・外交などの分野で場合分けすることを意識したい。筑波大日本史は場合分けの意識が重要である。


 筑波大日本史の答案例で、容易に手に入るものとしては赤本がある。また、塚原哲也先生の『つかはらの日本史工房』の筑波大学のページに一部の年度の問題と答案例が掲載されている。

 以下に示した答案例は、田中が独自に作成したものです。受験生が筑波大日本史に取り組むにあたって、答案例の1つとして参考にしてもらえればと思います。

 受験日本史の指導者の方にも参考にしていただければ幸いです。筑波大受験生を指導するにあたって、複数の答案例に触れながら、考えることは重要と考えます。答案例を使用の際は田中一平が作成した答案例であることを明記して、ご使用ください


更新履歴

 2023年5月7日、2023年第4問の答案例を公開しました。なお、一部答案例は有料とさせていただいております


筑波大日本史論述答案例

年度 第1問(原始古代) 第2問(中世) 第3問(近世) 第4問(近現代)  
2024年 奈良時代の政治の展開と仏教

日明間の貿易交渉の推移と貿易の特色(史料)

江戸時代の民衆運動の推移 高度経済成長期の国民生活と意識の変化  
2023年 6世紀と8世紀の政治制度の違い 御家人の所領と相続形態の推移 江戸幕府における儒学需要の推移 日比谷焼打ち事件前後の政治情勢と社会情勢の変化  
2022年 摂関政治について 戦国大名の領国支配 幕末の朝幕関係と公武合体(史料) 新体制運動をめぐる思想動向  
2021年 日本における律令制編纂の過程(史料) 平安時代後期から鎌倉時代における浄土信仰の推移 17~18世紀鎖国下における異国・異域との交流 明治期における雑誌の変遷  
2020年 律令政府の土地政策の推移 14世紀における政権の推移(史料) 18世紀における学問・思想の特色 第2次世界大戦後の占領体制の構築と国民生活  
2019年 8・9世紀における中国文化の受容 室町時代における民衆の動向 17世紀における幕府政治の推移 原敬内閣の施策と吉野作造の要望(史料)  
2018年 7世紀末~8世紀末の都城の役割と遷都の事実 鎌倉時代後期における幕府政治の推移 日米通商航海条約の締結とその影響(史料) 明治期の地方制度の変遷  
2017年 白村江の戦いと天智朝の政策(史料) 戦国時代の社会と文化 18~19世紀の地理認識の発達と政治や社会の関わり 昭和初期の政治における政党  
2016年 8・9世紀と10・11世紀の租税制度の違い 建武の新政(史料) 17世紀中期から18世紀を通じての産業の変化と社会への影響 明治初期の社会と文化  
2015年 7世紀から11世紀における銭貨の鋳造と流通 13世紀の政治体制の推移 江戸初期~正徳政治期の日朝関係(史料) 20世紀後半の日本の経済と対外関係  
2014年 平安時代初期の政治の推移(史料) 13世紀における日本と中国の交流 18世紀後半における社会の変化 1910~1920年代の思想と社会  
2013年 6世紀~9世紀における歴史書編纂の意義 室町時代の芸能 18世紀後半における幕府政治の推移(史料) 1930年前後の日中関係の推移  
2012年 国風文化 鎌倉幕府の成立過程 江戸時代中期の武家社会(史料) 昭和初期の経済政策  
2011年 8~9世紀における東北地方の動向 永仁の徳政令(史料) 19世紀前半における日本と欧米諸国の関係の推移 明治初期の士族  
2010年 7世紀後半の国家形成過程 14~16世紀における日中関係の推移 江戸時代前半期における社会の文化的特徴 大正政変前後の政治構造(史料)  
2009年 縄文~古墳時代における社会の変化 承久の乱前後の朝幕関係 末期養子の禁とその緩和の背景(史料) 第二次世界大戦後の内外情勢  
2008年 推古朝の政治と社会 戦国時代の群雄割拠と領国支配の特徴 江戸時代前・中期における農業生産の進展 1910年代から1920年代における思想状況  
2007年 古代における学問と政治の関係 平安時代後期における院政のあり方 江戸時代後期における文化の特徴 明治前半期における軍事制度の確立  
2006年 推古朝の政治と文化の特質 鎌倉時代の仏教について 禁中並公家諸法度発布の背景(史料) 日中戦争開始~太平洋戦争終結にかけての国民生活  
2005年 武士の台頭 惣村の役割(史料) 17世紀における江戸幕府の対外政策 日露戦争前後の産業構造  
2004年 奈良時代の人々の生活 鎌倉時代における政治の展開 江戸時代の貨幣 1930年代の政治の変化(史料)  
2003年 平安時代後期の政治と社会(史料) 鎌倉・室町時代における商業の発達 天保期の政治と社会(史料) 第二次世界大戦直後の日本の文化状況  

2003年は史料問題が2題、2007年は史料問題が1題も出題されていない。